【ユーザー(女)&遼子】 友達――女の子同士でチョコを交換すると、その年は恋人が出来ない、なんてありがちなジンクスが存在する。 よくある話だ。 大方、交換するくらい仲が良いなら恋をする必要もないとかそんな所だろう。 現に私自身、そう思っていた……遼子と知り合うまでは。 少し前に、2月中に会えないか、と尋ねられた。 その時の彼女は、今思えば随分顔を赤くしていたと思う。 チョコを作ってきて交換しないか、との誘いに「いいよ」と頷いた時、例のジンクスを思い出さなかったと言えば嘘になる。 でも私は忘れていた。 ……彼女は、お菓子作りが下手だということを。 「どう作ったらこうなるのか、逆に私が聞きたいなあ…」 差し出された、煎餅のような固さのクッキーをかじりながらぼやく。 「あ、あぅ……でも食べてくれるんだ…ユーザちゃん…」 遼子が、申し訳なさそうに縮こまりながら、私の作ったココアクッキーを頬張る。 特に何を作ろうと決めてなかったせいで彼女と被ってしまった。といっても私はココアクッキー、遼子のはチョコチップクッキーだ。 …クッキー自体作るのはそう難しくはない。ないはずなのだけど…。 そんな事を考えながら、未だ半分も食べきっていないクッキーをかじっていると。 「あ、あのさユーザちゃん…今度、その、あたしの家に遊びにこない?」 「…へっ?遼子ちゃん家に?」 あまりにも唐突な誘いに、ペットボトルを取りかけた手が止まる。 …彼女は、約束したあの時のように頬を染めて。 「ユーザちゃんのクッキー、美味しいなって……あたし、何回も作り直したんだよ。 なのに結局こんなのしか作れなくて…。お願いユーザちゃんっ、あたしに教えて!」 「いいけど……私でいいの? お母さんに聞いたら教えてくれそうな気がするけど…遼子ちゃんち、仲良さそうだし」 そう問うと、彼女は俯く。 「…今まで、ユーザちゃんとは、こんな風に外でしか会ったことないでしょう? あたし…貴方と友達になれて凄く嬉しかったの…だから。友達らしい事、もっとしてみたいなぁって…だめかな…?」