早朝の、まだ人が歩き出すには早すぎるような時間。 …ドキドキしていた。心臓が飛び出してどこかに行ってしまうんじゃないか、って位ドキドキしていた。 火が出そうな程に顔は火照り、ふっと気を抜くと、周りの事なんてなにも見えなくなってしまいそう。 耳を澄ませずとも、激しく響く胸の音は― ひょっとしたら誰かに見られているんじゃないかって、 そんな、焦燥感と激しい羞恥心を起こさせると同時に、身体の深い深い奥のどこかを疼かせた。 電信柱に隠れて、辺りをきょろきょろと見渡しながら歩き進んでいく。 胸の鼓動は先よりも増して早い。左右を見渡している合間にも、どくどく響いてあたしの思考をおかしくしそうだ…。 がさ、と茂みの奥から聞こえた僅かな音に、思わず身体を固くした。 がさささ、と葉を揺らして野良猫があらわれる。それはこちらを軽く一瞥すると、ふらりと何処かに行ってしまった。 「……っ、ぁ、はぁ……ね、……ねこ」 猫が消えた先を見つめて、あたしは深い息をついて、胸に当てていた腕を下ろす…―刹那。 「んっ……」 下ろし掛けたその腕の、指先が、胸の先端を掠めると、甘く弱い刺激が身体を駆けめぐり、 思わずあたしは小さく息を吐いた。 ――掠めただけなのに。 それまで気にしていなかった…いや、外でなんて、恥ずかしくて自分の身体を見られなかったあたしは この時、初めて、店のガラス越しに自分の身体を…見た。 普段は、薄めだが、なるべく、ボディラインが出ないような生地で出来た服を着ているが為に 決して晒すことのない、そのやや白い、健康そうな肌。 それが、今はやや赤みを帯びている様に見えた。 ………緊張しているのか、それとも、興奮しているのか、自分でもわからない。 さっき触れた、小さな、胸の先端は固く、ぷっくりと膨れて、何だかとてもいやらしい。 触れていない方も、やっぱり同じようになっていて、いやらしい。 触ってないのに、こんなに、しちゃうんだ……。あたし、おかしいのかな…… ぼうっとして、ガラスを見つめていると、ふいに、内股の辺りが、きらりと光を反射させたような気がした。 何だろう? 思考が霞んでいる。何も考えずに、そこへ手をやろうとして、…気付いてしまった。 触れた所から指を離すと、くち、と僅かに粘りけのある音を立てて、銀色の糸を引く。 ………濡れてた。 身体の深い深い奥が疼いて、そこから、とめどなく溢れた蜜は、知らずの内に内股まで垂れてくる程になっていたらしい。 「や…… やだぁ……あたし…っ……」 無意識のうちに、また触れそうになる。慌てて股をきつく締めると、ぬる、と何かが零れた様な感覚に襲われ あたしは身震いした。 「ちっ…、ちがう、よぅ……あたし…、あたし……… 興奮して、なんて…!」 ――あぁ、どうして。なんでこうなってしまったんだろう?