深夜。 温泉にやってきて、三人で騒いだその夜。 ――特に別室にするわけでもなく、三人一緒の和室で眠ることになっていた。 …と、いうのはまぁ、実は遼子の手違いで三人一緒になってしまったのだが。 詫びる遼子に、二人は大丈夫だよ、と口々に宥めた。 最初は布団の上でUNO、続いてたわいもないお喋り。 途中、胸の話で新子が黙りを決め込んだのは…まぁ流すとして。 そうして、夜は更けて― 深夜。 気づけば三人とも喋り疲れて、すっかり眠ってしまっていた。 「・・・・ん・・・・・  ・・・?」 寝返りで目が覚めた――…いや、戸の隙間から明かりが漏れていた。 ふと、隣を見ると寝ていたはずの遼子が居ない。 花摘みにでも行ってそのまま戸を閉め忘れたのだろうか? マカがそう思った次の瞬間、 ――ぺたり。 反対側から…つまり、ふすまを隔てた部屋の奥から、微かな人の足音。 思わず飛び起きた。 様子を伺いに部屋の奥へ向かう。確か奥は窓際だったハズだ。 出来るだけ足音を殺し、そっと覗き込む。 …遼子が、椅子に座ってぼんやりしていた。 外を見ているわけでもなさそうだった。只、来ている寝間着…着物の胸元がややはだけて、 そこから右の方が露出しそうになっている。 その前のテーブル――上に空のコップがあった。何か飲んだのだろうか? 「どうしたの、遼子」 そのまま椅子で寝てしまわれては困る。そう判断して、近寄る。 遼子がこちらを見た…微かに上気した顔をしている気が―― 「マカ…さ、ん」 呼ばれた遼子が立ち上がる。何だかふらついている様に見えて、 慌てて傍に駆け寄った。 「起こしちゃった、かな… あはは…ぁ…」 「眠れないの? こんな時間に―」 マカが声を掛けたと同時に、遼子がその肩に手を掛ける。 「・・・遼子?」 気心知れた相手とはいえ、肩を掴まれるという予想外の行動に 一瞬身構えて――動けなくなった。 「…そのまま」 目をじっと、見据えて遼子が言う。 ――あまりにも真っ直ぐに見つめられて反応が遅れた。 唇に触れ― 重ねられたそれで、我に返る。 「りょっ…」 軽く重ねられた唇が、離れたと思った次の瞬間に再び重ねられる。 下唇を啄むようにこじ開けられて、舌と舌が触れた。…そのまま絡め取られて。 「んっ、ふ…ぅ」 離れようにも、いつの間にか遼子が片腕を肩から腰に回していて動けない。 そのまま、壁際に押し寄せられた。 …ちゅぅ、と微かな音を立てた後、顔がまた離れる。 「ぁは…マカさ、ん……おいし…」 ――口の中に微かな何かの味。これは…アルコール?