ぺらり、ぺらりと。 丁寧にページを捲る。 ――先ほど届いたテキストの量は半端じゃなかった。 「あぁ、…うん、いつもはこんなに無いのに」 それにしては多すぎないか、という言葉を飲み込み、私は大雑把にテキストに目を通す。 書いてあるのは詩だ。詩や歌詞、意味のない言葉の羅列だったりもするが 概ねこれらに載ってるのは詩、ばかりで―― 「『記憶の片隅、忘れていたのは』…」 「……何が面白いんだか…」 「むっ」 背後から、ぼそりと聞こえた声に思わず反射的に声があがる。 「…詩を読まない人に、詩の楽しさは伝わりませんよーだっ」 振り向き、声の主…雲之ツキ君に向かって、軽くあっかんべーをしながら言い放つ。 というか最近よく私の元に来るんだけど、彼は一体何がしたいのかよくわからない。 「で、詠まないの? ソレ」 軽く笑ってツキ君が自分の持っているテキストを指差す。 判っているのかそうでないのか知らないが、彼が来ると何故だか私は詩を上手く読めなくなる。 「・・・・・貴方が来たからあとにしますっ。」 ぱさり、とテキストを閉じる。これでは何のためにテキストを開いたのか判らない。 聞かせてくれてもいいじゃん、と彼がぼやくのを背中で聞きながら、 ―――貴方が居ると詠えないのよ、と。 喉まで出かかった言葉を押しこめた。