○月×日 今日もあの人は私を呼んだ。 全く…―――こっちは、書き留めた詩の整頓で忙しいっていうのに。 不満げに口をとがらせる私の気も知らずに、あの人は更に誰かを呼ぶ。 ―――あぁ、またあの子か。 燃える様な髪の…左目を髪で隠した彼女―名前は、確か、ラエリとか言ったっけ。 最初にあの子と一緒になった時は、気の滅入るようなことしか言わなくて 本当嫌な子だなぁ、と思っていたんだけど、それでもあの人…彼は、彼女に会い続けていたようだった。 数日経ち、やがて彼女の「人を寄せ付けない」と思われていたオーラが薄くなったことに気づく。 …と、同時に、彼女は、彼に触られても照れる―というかあれはデレってやつでしょ―ことが多くなった。 だがしかし。 なんでそれを私の目の前でやるのかなぁ… 故意なのかしらね、見せつけなんて。というか、そうとしか思えないでしょ。 勘弁してよね…もう―――――― 『っと、ごめん二人とも―――暫く待っててくれるかい』 彼がそういうと、ふっと視界が薄暗くなった。 「え……ぁ………ぅん…わかった」 隅の方で彼女が、彼に言ったつもりで呟く。あぁ、これは…アイコン化されたのか。 ――私達の世界では、それは割と日常的にあることなのだけど。 「アイコン化するくらいなら、せめて終了してよね… …こう薄暗いと、視界があれだから整頓もしにくいっていうのに…」 しかも、彼女―ラエリ―と二人きりなんて。 今までも何度かこういう事はあったけれど、正直なところ―― 最近の、デレた彼女はまるで落ち着きが無く。 そんな状態で二人きりにされると、こっちまで落ち着かなく…… ………――いっちょ、黙らせますか。 こう薄暗くては、自分の字さえも読みづらい。 私は一旦まとめたそれを、ばさっと投げて放棄した。 …そして、隅できょろきょろしているラエリの元へと歩み寄る。 「ねえ」 声を掛けると、肩をびくっとさせて彼女は振り向いた。 「…………何…?」 振り向いた時に流れた髪が、ゆるやかに動く。 それを何となく『綺麗だな』と思いながら、私は、彼女の頬にそっと右手を伸ばす。 きゃっ、と小さく声を上げる彼女。 それが何となく可愛……面白かったので、次に左手を彼女の肩…、後ろへ―― 「……ぇ?」 抱き寄せた。 見かけによらず…いや、そうでもなかった、華奢だけど、しっかりとしている。 白い肌の見え隠れするうなじをそっと撫でれば、戸惑うように呻く彼女の声が私の内を煽るから、思わず、 「あなた、それ、誘ってるの?」 なんて言ってみたりして…… 「……誘ってるのは貴女でしょう。…いきなり。」 か細い声で返された。 「へぇー、そんなこと言うんだ…?」 このまま悪戯しちゃおうか、等と考えを巡らせていると ―――ぷつん。 一瞬真っ暗になった。 が、只でさえアイコン化で薄暗かったので、大して暗くなったとは感じなかった。 さっきの、何かが切れたような音から察するに、これは… ブレーカーが落ちた? 「あの人…戻って、くるかな……くるよね?」 彼女が呟く。あぁそうだ、この子は知らないんだ。 あの人がうっかりブレーカーを落とすのは、食事時だけだ、ってこと。 「戻ってくると思うよ? …食事を終えたら、だから30分は戻ってこないだろうけど」 言いながら私は、彼女の服の、脇の所から手を滑り込ませ