―――森の中を、三つの影が駆ける。 「…――レイキっ!」 「はい、姉さん!」 私よりも5m程先から返事が聞こえた。 我ながらよく聞き取れたものだ、と思いながら― その遥か前方を走る『ソレ』から私は目をそらさない。 (把握するの、空間を) 心でそう念じながら、私の目は先を視る。 「あと数十mで広いとこに出るわ!」 「……わかりました、では、止めますね――」 妹の駆けるスピードが上がる。 …あの子は私よりも足が速いから、こういう時に相手に追いつき動きを止めるのは、 まず間違いなくあの子の役目となる。 相手の墓場となるのは、そう、さっき私が視た、広い―― いつの間に抜けたのか、先回りに成功したらしいレイキの術が、 木々の間をぬって駆ける相手の目の前に、銀色に輝く魔法陣を指し立てる。 止まる暇もなく、その身体は魔法陣に掛かって―― 「停(テイ)!」 ばしゅ、と鈍い音をした。 と同時に身動きが取れなくなったらしい。「ソレ」はしきりにもがき始める。が、無駄だ。 レイキのその術は、言わば対象を小さな檻に閉じこめてしまうようなものだ。 「……おいついたっ」 「準備は万端ですよ、ねえさんっ」 「ありがとレイキっ、それじゃ行くよ―― 炎(エン)!」 対象を燃やす技。あまりにもそのままっちゃそのままなのだが、その名称の通り、相手は「燃えた」のだった。 ……数分後。 「―――さてと。というわけで、今日のお昼は鹿肉ー♪」 「姉さんが派手に術行使したから、充分火は通ってるみたいですよ。」 「えー?レアはないのぉ…?」 私、ちょっと涙目。 「…あることにはありますが、とてもレアとは呼べないくらいに焼けてますよ」 即席で大きい葉を皿代わりに、レイキが切り分けた鹿肉を葉に乗せる。 「はいどーぞ」